Shota's Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

構成がとても巧妙、私的海外ドラマ最高作

私が初めてハマった海外のドラマ・シリーズで、86年~94年の長きにわたってシリーズ化された(日本でも深夜放送されていた)。 内容は『L.A.ロー 七人の弁護士』というタイトルのとおりだが、構成がとても巧妙で、1話ごとの起承転結の上に5~6話にわたる…

金持ちと貧乏人の行ける「デジタルのあの世」の差がおもしろい

ネット・ドラマ全盛の中、アマプラでは本作『アップロード』が私的に最高。 死に際して記憶や人格をデジタル世界にアップロードする話だが、お金持ちには優雅で豪華な世界が用意され、貧乏人は出来損ないのマインクラフトのような世界にしか行けない。楽しい…

常にその時代の暗い面をヒーロー活劇の裏に重ね描く

日本を舞台にしたスピン・オフ作品のなかにはトンデモなものもあるのだが、この5枚組セットはどれも『X-MEN』の基本、出来は保証できる。 このシリーズは全体的に、いつもその時代の暗い面をヒーロー活劇の裏に重ね描きこんでいる。特に初期2作は、監督がB・…

女性誌『CREA』の特集“ゲイ・ルネッサンス'91”と双璧をなし、90年代ゲイを救った

まだ「LGBT」という言葉すらなかった'93年の日テレ系ドラマ『同窓会』。 クローゼットの中に隠れていた日本の少年ゲイたちにとっては革命だった。 バイで男にも女にも体を売る少年山口達也(ハダカが本当にキレイだった……再起を願う)、そして自分が好かれて…

与えられるべきものを奪われた子どもたちの悲痛

日本初の劇場型犯罪、昭和59年の“グリコ・森永事件”をなぞりながら、その一部始終のひとつの可能性を、緻密な想像で描く。軸となるのは、犯人でも被害者でもなく、犯罪電話に使われた“声の主”の子どもたち3人。警察とマスコミを翻弄した事件を、20数年を経て…

たぶん根は悪い人間ではない、気まぐれに見える小娘の造形がよい

ブラジルのどこかの田舎町。視力を失いつつある独居老人は、頑固で融通が利かず、大切な手紙も読めない。そんな彼が偶然出会ったのは、サクッと人の物を盗んでいくし、シレっとを人を裏切るような小娘。たぶん根は悪い人間ではない彼女に手紙のやりとりの代…

予告編は観ないで直当たりで観るのがオススメ。しみじみと怖い。

怖い怖い怖い怖い。冒頭、小春(土屋太鳳)一家が襲われる大惨事の数々はコミカルなのに、白馬に乗った王子様である大悟(田中圭)と出会った!──という突然の大きな幸福の後に、気がつけば積み重なってゆく小さな歪み……。シンデレラの話に「哀愁」とつくタ…

自分がゲイだと認めきれていない青年の、好きな男とのたった一度の、悪ふざけのような数秒間のキス。

『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』のグザヴィエ・ドランの主演・監督作。 仲間同士のパーティや馬鹿騒ぎ、流暢で皮肉に満ちたフランス流の会話の応酬に隠されたひとつの想い。自分がゲイだと認めきれていない青年の、好きな男とのたった一度の、悪ふざけの…

実話。彼らは今、どうなっているんだろう。

“ストックホルム症候群”――誘拐や監禁などの密室状態で、被害者が犯人に好意を持ってしまう心理状態。本作ではその名の元となった1973年の人質監禁強盗事件を丁寧に、時に乱暴に描く。政治家や警察など部外者を信じられない中、被害者の密室での好意は恋とな…

ただただ怖い、が、最後の一瞬で、観客はさらに怖いことに気づく。

歴史が浅い国のわりに、アメリカの地下には数千kmもの忘れられた地下道がある。破棄された地下鉄網や道路、廃坑などだ。地上には陽射しに包まれた生活がある。しかし地下にもし、封じられた人々の生活があるとしたら……まるで地上の人々の幸せの影にように。…

歪んだユーモアを持つサイコパスとなった。同情はできない哀しさ。

世紀の悪人は、いかにして悪人となりしか。アメコミの常で各キャラの出自は何度も違う形で描かれてきたが、バットマンの宿敵ジョーカーについては、これがもっともダーク。堕ちていったのに、大きな要因などなかった。病の母を介護しつつ芸人を目指し、ピエ…

感情を持たない“欠陥品”の少女と、品行方正の優等生

自分が“怒り”や“悲しみ”という感情を持たない欠陥品だと気づいた少女は、周囲の感情をテクニックで模倣することで調和を保とうとしていた。 精神科医たちは助けにはならない。挙げ句、同級の“優等生”に友人としてセラピーを受けることに。 しかし、歪みが外…

ボリウッド映画から脱し、歌い踊る代わりに、殺す、殺す、埋める、隠す。

話題のため盲目を装ったピアニストが、招かれて行った大富豪の家で、その富豪が若い妻とその愛人に殺されているのを“目撃”。 いや、目撃してはならないのだ、彼は盲目なのだから。 大勢の歌と踊りで魅せるボリウッド映画から脱し、脚本と演技の力で勝負した…

ぼくらが子どものころに憧れた近未来そのもの

脳内にAIチップを埋め込むことで超人的サイボーグとなる主人公──SFでは見慣れた設定だが、いや待て、腕に内蔵された銃、全自動で動く部屋や車、拡張された身体能力、頭内に響く的確なチップの声。これは、ぼくらが子どものころに憧れた近未来そのものじゃな…

上出来の韓流コメディ・アクション

いささか残念な面々が集まった麻薬捜査班。他班に出し抜かれた挽回にと、悪党組織の真向かいのフライドチキン店を買い取り常時監視を企むが──それぞれ意外な才能を発揮してしまい、チキン店は行列の大繁盛に!『過速スキャンダル』『サニー永遠の仲間たち』…

黒人として生きることの閉塞感、見せかけの平等社会への違和感

戦争中の母国から裕福な白人夫婦に引き取られた黒人高校生のルースは、学業・スポーツ・討論、いずれも秀でた“学校のスター”。彼が“名誉白人”として扱われていることは、たぶん本人も気づいていない。だが、ある事件をきっかけに“彼はじつは危険な思想を内に…

欧州人の気取りと、その皮一枚下にある人間味

フランス流のエスプリを効かせた舞台が欧州中で好評となり映画化、当事国(として笑われる)ドイツでも150万人動員の大ヒットに。 出産間近のあるご婦人を祝いに集まったのは、知性あふれる5人の男女。シニカルで気の効いた、軽快な会話が続く中、我が子の名…

“剣と龍と魔法モノ”をピクサー流に調理したら、美味しい、良質なコメディに

痩せて気弱な弟と“古代魔術オタク”でハチャメチャな兄。亡き父が遺した魔術で父を1日だけ蘇らせようとするが、生き返ったのは下から半分だけ!兄弟は、完全再生に必要な地図や剣や石を探して無茶な冒険に出る。“剣と龍と魔法モノ”をピクサー流に調理したら、…

「元彼・元カノ」より一層深く濃い「元彼・元彼」の関係と軋轢

青年期をゲイ / バイとして過ごし、同性との恋愛やセックスを重ねた後、女性と結婚する人は少なくない。それを虚無と捉え、あえて都会から山村に移り一人で暮らしていた若者を、かつて恋人だった男が訪ねてくる。幼い一人娘を連れて。女なんかと結婚してたの…

米露、敵対するはずの潜水艦船員たちのヒリヒリとした感覚。

米ロ、敵対する二国の潜水艦の一方が深海で事故に巻き込まれる。これは罠か!?安全な地上にいる役人たちからの指令と、“人生の大半を水の中で過ごしてきた艦員たち”の“勘”やヒリヒリとした“感覚”、国を超えた“同胞的な想い”──ボタンひとつで核戦争が始まる可…

困難にきちんと対峙しようとする、未熟すぎてそれしか術を知らない少女たち

互いの父と母が不倫関係にある二人の女子高校生。一時は校内で取っ組み合いのケンカをするほどの険悪さだったが、不倫の母の妊娠・出産で双方にとっての“義理の弟”が生まれたことを機に、その関係は徐々に変化していく。その場の快楽だけを求め、困難に対面…

ボリウッド映画から脱し、殺す、殺す、埋める、隠す。

話題のため盲目を装ったピアニストが、招かれて行った大富豪の家で、その富豪が若い妻とその愛人に殺されているのを“目撃”。いや、目撃してはならないのだ、彼は盲目なのだから。大勢の歌と踊りで魅せるボリウッド映画から脱し、脚本と演技の力で勝負した一…

上出来の韓流コメディ・アクション

いささか残念な面々が集まった麻薬捜査班。他班に出し抜かれた挽回にと、悪党組織の真向かいのフライドチキン店を買い取り常時監視を企むが──それぞれ意外な才能を発揮してしまい、チキン店は行列の大繁盛に!『過速スキャンダル』『サニー 永遠の仲間たち』…

ぼくらが子どものころに憧れた近未来そのもの

脳内にAIチップを埋め込むことで超人的サイボーグとなる主人公──SFでは見慣れた設定だが、いや待て、腕に内蔵された銃、全自動で動く部屋や車、拡張された身体能力、頭内に響く的確なチップの声。これは、ぼくらが子どものころに憧れた近未来そのものじゃな…

アメリカの地下にある忘れられた数千kmの地下道──ただただ怖い。

歴史が浅い国のわりに、アメリカの地下には数千kmもの忘れられた地下道がある。破棄された地下鉄網や道路、廃坑などだ。地上には陽射しに包まれた生活がある。しかし地下にもし、封じられた人々の生活があるとしたら……まるで地上の人々の幸せの影にように。…

苦労人は、いつしか歪んだユーモアを持つサイコパスとなった。同情はできない哀しさ。

世紀の悪人は、いかにして悪人となりしか。アメコミの常で各キャラの出自は何度も違う形で描かれてきたが、バットマンの宿敵ジョーカーについては、これがもっともダーク。堕ちていったのに、大きな要因などなかった。病の母を介護しつつ芸人を目指し、ピエ…

感情を持たない欠陥品だと気づいた少女は、“優等生”の友人にセラピーを受けることに……しかしそこにはより深い闇が。

自分が“怒り”や“悲しみ”という感情を持たない欠陥品だと気づいた少女は、周囲の感情をテクニックで模倣することで調和を保とうとしていた。 精神科医たちは助けにはならない。挙げ句、同級の“優等生”に友人としてセラピーを受けることに。 しかし、歪みが外…

男と女、一度愛の不均衡が生まれると、なかなか本人らには是正できない

男は女を雑に扱う。女はそれでも一途に好きでいる。 一度愛の不均衡が生まれると、なかなか本人たちには是正できない。 “恋人”という関係の、実際の惰性や曖昧さを淡々と、しかしある意味容赦なく描写する。 小説を原作に持つせいか人物背景などを作り込みす…

もろもろブッ込んだB級覚悟の前作にさらにマッドなSF色を大量添加

B級覚悟なのに意外にもヒットした前作のさっそくの続編。 もろもろブッ込んだ前作にさらにマッドなSF色を大量添加、ただでさえループしている縦の時間軸に、方々に分岐する並行世界を横軸として織り込み、登場人物も観る方も大混乱。そのカオスが楽しい。 刺…

「B級上等!」なのによくまとまっていて◎

ホラー × サスペンス × SF × 学園ロマンスと、「B級上等!」的にブッ込んできたわりに、よくまとまっていて楽しい。ある朝見知らぬ男子学生のベッドで目覚めたツリーは、二日酔いを呪いつつ最悪の一日をすごし、最後に仮面を被った何者かに殺され──たはずが…