Shota's Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

自分がゲイだと認めきれていない青年の、好きな男とのたった一度の、悪ふざけのような数秒間のキス。

 『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』のグザヴィエ・ドランの主演・監督作。

仲間同士のパーティや馬鹿騒ぎ、流暢で皮肉に満ちたフランス流の会話の応酬に隠されたひとつの想い。
自分がゲイだと認めきれていない青年の、好きな男とのたった一度の、悪ふざけのような数秒間のキス。
彼だけが大切にし、心の中に沈めている思い出。それが「学生映画を撮りたい」という友人の妹の願いによって、もう一度表面に浮き上がってくる――その想いがとても美しい。