Shota's Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

構成がとても巧妙、私的海外ドラマ最高作

私が初めてハマった海外のドラマ・シリーズで、86年~94年の長きにわたってシリーズ化された(日本でも深夜放送されていた)。
内容は『L.A.ロー 七人の弁護士』というタイトルのとおりだが、構成がとても巧妙で、1話ごとの起承転結の上に5~6話にわたる中型のテーマが乗り、さらにシリーズ全体を貫く大きなテーマが設定されていて飽きない。ロス暴動やLGBTへの課題など、当時のアメリカ社会の映し鏡でもあった。
(一応は)一話完結なので、途中から見てもOKなのがよい。  

金持ちと貧乏人の行ける「デジタルのあの世」の差がおもしろい

  ネット・ドラマ全盛の中、アマプラでは本作『アップロード』が私的に最高。
死に際して記憶や人格をデジタル世界にアップロードする話だが、お金持ちには優雅で豪華な世界が用意され、貧乏人は出来損ないのマインクラフトのような世界にしか行けない。楽しいはずのSFで、彼我の現実を思い出してシュンとなる。
 地上(?)のリアル世界と、デジタル世界の境を乗り越えた恋愛話もデジタルでありつつアナログ。よい。

 ただし、ネットドラマって、人気が出たらどんどんシリーズが増えて、なかなか途中参入できないのがつらい。“シーズン10”って、『名探偵コナン』か!(もうすぐ100巻でまだ途中)
 本作はまだシーズン1。見始めるなら今です。

常にその時代の暗い面をヒーロー活劇の裏に重ね描く

 日本を舞台にしたスピン・オフ作品のなかにはトンデモなものもあるのだが、この5枚組セットはどれも『X-MEN』の基本、出来は保証できる。
 このシリーズは全体的に、いつもその時代の暗い面をヒーロー活劇の裏に重ね描きこんでいる。特に初期2作は、監督がB・シンガー(ゲイ)で、完全に性的マイノリティの映画。自分の特殊能力に悩み、孤独で、葛藤する少年少女の姿はまさに当時の性的少数者の写し絵。父親を悲しませまいと浴室で必死に自分の背中の羽根を削り落とそうとする少年を見てほしい。

女性誌『CREA』の特集“ゲイ・ルネッサンス'91”と双璧をなし、90年代ゲイを救った

 まだ「LGBT」という言葉すらなかった'93年の日テレ系ドラマ『同窓会』。
 クローゼットの中に隠れていた日本の少年ゲイたちにとっては革命だった
。  バイで男にも女にも体を売る少年山口達也(ハダカが本当にキレイだった……再起を願う)、そして自分が好かれていることにも無頓着でノンキなノンケの髙嶋兄。彼にずっと恋し、横に寝ている彼の身体に手を伸ばそうとしてグッと拳を噛んで堪える主人公、西村和彦。全ゲイが枕に顔を押し付けて泣く。
 と、ここにもってきて視聴率が上がったのか、同時期の他局のドラマでも突然ゲイの人物がわらわらと登場。電博よ、ありがとう、恥を知れ。
 そして少年たちは、だんだんとクローゼットから出てきた(come out)。
 ドラマ『同窓会』自体は、最後は脚本の井沢満が大暴走、LGBTのイロハも無視して国分太一が女性化し、ウェディングドレスを着て終わる。なんじゃそら。だがその功績は大きかった('91の女性誌CREA』の特集“ゲイ・ルネッサンス'91”と双璧)。

与えられるべきものを奪われた子どもたちの悲痛

 日本初の劇場型犯罪、昭和59年の“グリコ・森永事件”をなぞりながら、その一部始終のひとつの可能性を、緻密な想像で描く。
軸となるのは、犯人でも被害者でもなく、犯罪電話に使われた“声の主”の子どもたち3人。
警察とマスコミを翻弄した事件を、20数年を経て問い直す意義。
元になった事件はいまだ未解決だが、与えられるべきものを奪われた周囲の人たちの悲痛はきっと本物。
意外なドンデン返しもあり、エンタメとしても成立している。

たぶん根は悪い人間ではない、気まぐれに見える小娘の造形がよい

 ブラジルのどこかの田舎町。
視力を失いつつある独居老人は、頑固で融通が利かず、大切な手紙も読めない。
そんな彼が偶然出会ったのは、サクッと人の物を盗んでいくし、シレっとを人を裏切るような小娘。
たぶん根は悪い人間ではない彼女に手紙のやりとりの代行を頼むうち、老人には活力が戻ってくる。生きる潤いが、意欲が戻ってくる。
気まぐれに見える小娘の造形がよい。そしてなんだかソワソワしている老人の姿がかわいい。
質の良い小作。

予告編は観ないで直当たりで観るのがオススメ。しみじみと怖い。

 怖い怖い怖い怖い。
冒頭、小春(土屋太鳳)一家が襲われる大惨事の数々はコミカルなのに、白馬に乗った王子様である大悟(田中圭)と出会った!──という突然の大きな幸福の後に、気がつけば積み重なってゆく小さな歪み……。
シンデレラの話に「哀愁」とつくタイトルの意味。
3月のライオン』や『ビブリア古書堂の事件手帖』の脚本を手掛けた渡部亮平の商業映画監督デビュー作。
予告編は観ないで直当たりで観るのがオススメ。しみじみと怖いよ。