もろもろブッ込んだB級覚悟の前作にさらにマッドなSF色を大量添加
B級覚悟なのに意外にもヒットした前作のさっそくの続編。
もろもろブッ込んだ前作にさらにマッドなSF色を大量添加、ただでさえループしている縦の時間軸に、方々に分岐する並行世界を横軸として織り込み、登場人物も観る方も大混乱。そのカオスが楽しい。
刺殺、撲殺、爆死に焼死、挙げ句の果てに農薬を飲み干したり華麗に首吊りしたりと、“死に方”のバリエーションを楽しんでるな、制作陣。
近年なぜか多いタイム・ループものを茶化す姿勢も◎
【CDジャーナル 20202年冬月号掲載】
「B級上等!」なのによくまとまっていて◎
ホラー × サスペンス × SF × 学園ロマンスと、「B級上等!」的にブッ込んできたわりに、よくまとまっていて楽しい。
ある朝見知らぬ男子学生のベッドで目覚めたツリーは、二日酔いを呪いつつ最悪の一日をすごし、最後に仮面を被った何者かに殺され──たはずが、また同じベッドで目覚める。
何度殺されても同じ、死に方を変えても、粗雑な性格を改めても、同じ一日から抜け出せないタイムリープ!
制作陣もたぶん予想していなかった思わぬヒットで続編決定。
【CDジャーナル 2020年冬月号掲載】
耐えて耐えて耐えたあと、ラストの法廷スピーチは圧巻。
たった50年前の米国、名門法科大を首席で卒業したルースだが、“女は弁護士に向かない”とすべて事務所で門前払い。
“差別ではない、区別だ”“女は家庭を守るべき”──今でも身近に聞く言葉。
だが権利の主張に失敗は致命的、失敗は前例となってかえって行く手を阻む。
実在の女判事の若き日を演じるのは『博士と彼女のセオリー』のF・ジョーンズ。
耐えて耐えて耐えたあと、ラストの法廷スピーチは圧巻。
【CDジャーナル 2019年秋月号掲載】
「虎の威を借る狐」の寓話を映画化したのかと思いきや、実話
第二次大戦末期のドイツ軍。
脱走した若い兵士が、道端で将校の軍服を見つける。それを着た彼を本物の将校と勘違いして媚び諂う者が集るようになり、権力に酔う若者は「即決裁判所」をも司るように。
裏切り者、売国奴と見做した同朋を次々とを処刑し始めたのだ。
「虎の威を借る狐」の寓話を映画化したのかと思いきや、実話だとな。
これから殺す相手を舞台に立たせて宴ができる。それが戦争、愚の極み。
【CDジャーナル 2019年秋月号掲載】
老女王の寵愛を争う女二人の生臭さ、狡猾さ。
18世紀初頭、続く戦争に疲弊していた英国。老いて孤独な女王と、二人の女がいた。幼馴染で遠慮のない公爵夫人。没落貴族で、下女となった美しい少女。
二人が競って寵愛を受けようと、老女との性行為すら厭わないのは、女王の信じる“愛”からではない。ただの上昇欲求だ。
①舞台や衣装の豪奢さと、彼女らの生臭さ(クンニ、手コキなんて行為も大事な劇中要素)、
②アホ面の男どもと女の狡猾さ、ふたつの対比を楽しむ。
【CDジャーナル 2019年夏号掲載】
奇をてらわない「愛することの悲しさ、切なさ」。多様化したゲイ映画の原点回帰。
“神の恵みの地”、つまり肥沃な農地が続くだけの広大な田舎。
老いた家族と酪農でくらすジョニーは、すべてを諦めた顔をしている。
彼はゲイだが、だから何があるわけでもない。酒と、たまに街に出たときの刹那的なセックスがあるだけ。
だが、農場を手伝いにきたある精悍な男との出会いは、いつしか彼の“諦め”を引っくり返す──奇をてらわない「愛することの悲しさ、切なさ」。多様化したゲイ映画の原点回帰。◎。
【CDジャーナル 2019年夏月号掲載】