ボリウッド映画から脱し、殺す、殺す、埋める、隠す。
話題のため盲目を装ったピアニストが、招かれて行った大富豪の家で、その富豪が若い妻とその愛人に殺されているのを“目撃”。
いや、目撃してはならないのだ、彼は盲目なのだから。
大勢の歌と踊りで魅せるボリウッド映画から脱し、脚本と演技の力で勝負した一本。
若く美しい妻らは、気軽に歌い踊る代わりに、殺す、殺す、埋める、隠す。
かなり凄惨な話なのに始終苦笑していられるのは、やはり監督と脚本の力。
【CDジャーナル 2020年夏月号掲載】
アメリカの地下にある忘れられた数千kmの地下道──ただただ怖い。
歴史が浅い国のわりに、アメリカの地下には数千kmもの忘れられた地下道がある。破棄された地下鉄網や道路、廃坑などだ。
地上には陽射しに包まれた生活がある。
しかし地下にもし、封じられた人々の生活があるとしたら……まるで地上の人々の幸せの影にように。
交わるべきではなかったのに、ある移動遊園地には、ふたつの世界を繋ぐ穴が開いていた──ただただ怖い、が、最後の一瞬で、観客はさらに怖いことに気づく。
【CDジャーナル 2020年春月号掲載】
感情を持たない欠陥品だと気づいた少女は、“優等生”の友人にセラピーを受けることに……しかしそこにはより深い闇が。
自分が“怒り”や“悲しみ”という感情を持たない欠陥品だと気づいた少女は、周囲の感情をテクニックで模倣することで調和を保とうとしていた。
精神科医たちは助けにはならない。挙げ句、同級の“優等生”に友人としてセラピーを受けることに。
しかし、歪みが外から見えている少女よりも、歪みを隠し通している“優等生”の闇は深かった──。ふたりは確かに通じ合った、“凶暴な友情”で。
小粒ながら、深い狂気を秘めた佳作。
【CDジャーナル 2020年春月号掲載】
男と女、一度愛の不均衡が生まれると、なかなか本人らには是正できない
男は女を雑に扱う。女はそれでも一途に好きでいる。 一度愛の不均衡が生まれると、なかなか本人たちには是正できない。
“恋人”という関係の、実際の惰性や曖昧さを淡々と、しかしある意味容赦なく描写する。
小説を原作に持つせいか人物背景などを作り込みすぎ、あざとい感もあるが、“幸福の瞬間”の象徴としてもっとも印象的な“ケチャップを味見する”シーンが、成田凌のアドリブだと知って驚く。丁寧な良作。
【CDジャーナル 2020年冬月号掲載】