Shota's Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

ユー・キャン・カウント・オン・ミー

事故で両親を失った姉弟が、正反対の大人に育った。姉のサミーは生真面目な常識人で、故郷の田舎町で息子と暮らす。弟のテリーはだらしのない風来坊で、子どもじみた行動がトラブルを招いてばかり。金に困った弟が久しぶりに故郷を訪ねて来たことから、静かだった姉の生活に小さな細波が立ち始める。男友達に求婚されているのに、お堅い上司とつい寝てみたり。母親への気遣いからかどこか大人びていた8歳の息子が、無邪気なテリーにどんどん感化されていったり。描かれるのは、普通の人の普通の生活だ。どの人物も不完全で、懸命に自分の人生を生きようとしているだけ。そんな地味な話が物語として成立しているのは、主演陣の演技力の賜物。良作である。

【CDジャーナル 2007年04月号掲載】