余命90分の男
役者の私生活と作品とは分けて考えるべきだろう。だが本品の場合、余韻は複雑だ。かつてはよき父、よき夫だった男が、長男の死を機に、怒りと不満に支配された生活を送るように。が、自分が重病で余命わずかだと知った瞬間、男は病院を飛び出し、ないがしろにしてきた家族や友人との幸せを取り戻そうと街中を奔走する──よくある“ハートフル・コメディ”に収まるはずだったが、主演のロビン・ウィリアムズが14年に自死し、事実上の遺作となった今、主人公が語る人生への失望や諦観が二重の意味を持って届き、物悲しい。
【CDジャーナル 2015年02月号掲載】