日々平然と万引きを繰り返す父子に、笑顔でJKビジネスに身を置く娘、人の弱みにつけ込んで小金をせしめる祖母──
是枝監督が描くのは、ただ小悪を重ねるだけの、観る価値もないような一家の日常。
だが物語が進むにつれ、何かの汚れが布地に染み広がっていくように、徐々に心を揺さぶられて深く深く見入る。
血縁すら定かでないままに集まった“疑似家族”、それぞれの根底にあるのは“諦観”。
まっとうに生きることを諦めたからこその、互いへの思いやり。
安藤サクラの巧演が、樹木希林への惜別を上回るほどに強く印象に残る。
【CDジャーナル 2019年5・6合併号掲載】