Shota's Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

シークレット・ヴォイス

表舞台から遠ざかり、生活にも困窮し始めた往年の歌姫リラ。
復活コンサートを目前に控えたある日、海岸で倒れているのを見つかった彼女は、自分の名前も、歌を歌うことも忘れていた。
彼女を支えるマネージャーは、彼女を崇拝して歌も踊りも完コピしている女性を見つけ出し──。
物語が静かに進む中、コピーがコピーをコピーすることが重ねられ、何がオリジナルなのかを見失う。
そもそも主人公は、自分が主人公であることを拒否している。
主題とは別に、物語の裏側に読み取れる2組の母娘の冷然とした愛憎関係が怖い。

【CDジャーナル 2019年04月号掲載】