Shota's Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

クワイエット・プレイス

冒頭からしばらく、音のないシーンが続く。
音に反応して襲ってくる“何か”から逃れるため、主人公一家は地下に潜り、手話で生活しているからだ。
しかしその“何か”は、全編を通してほとんど姿を現さない。
その正体や由来が説明されることもないまま、観客は放置される。
世界は“何か”によって荒廃しているらしい──人間にとってもっとも恐ろしいものは、“正体が分からない何か”だということだけが分かる。
この映画自体が何かの実験なのか、我々を試しているのか、という戸惑いの中、純度の高い“怖さ”だけが迫り来る。

【CDジャーナル 2019年02・03月合併号掲載】