Shota's Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

2重螺旋の恋人

冒頭2分ほどで女性の美しさとグロテスクさの両極を映像にして惹きつけ、それからゆっくりとつまびらかにされていく端正な狂気。女性性を執念深く描き続けてきたオゾン監督が、本作ではそれに“双子の葛藤”という要素を加えてきた(=アイデンティティの共有と分裂)。
美しく心を病んだ女性と、彼女を患者として見られなくなった精神分析医。
多用される鏡を使ったシーンと、微妙に崩れたシンメトリーの構図により、何が虚で何が実か、鏡の向こうとこちらのどちらが真実か、本人たちだけでなく観る者も分からなくなる。

【CDジャーナル 2019年02・03月合併号掲載】