人は本当に悲しいとき、泣くまでに時間がかかる。兄の死により甥の後見人に指名され、事情があって離れていた故郷に戻る男。甥である少年はまだ十代で、バンド活動や女の子にうつつを抜かし、父の死に傷ついてい様子はない──が、実はそれはまだ幼すぎて、悲しみに対応しきれていないだけ。そしてそれは主人公も同じだった。逃げているだけで、何も乗り越えていない大人──。『インターステラー』のC・アフレックが抑制された演技でアカデミー主演男優賞、監督のK・ロナーガンが脚本賞を受賞。静かな感動。
【CDジャーナル 2017年11月号掲載】