Shota's Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

アリスのままで

アリスはまだ50歳の優秀な言語学者。物忘れが多くなり受診した神経科で、自分がその病にかかっていることを知った。若年性アルツハイマー。若くして老い、日々記憶の欠片を失っていく恐怖。自分が朽ちていくのを傍観するしかない絶望。「癌ならよかった。癌なら恥ずかしくない」と彼女は恥じさえする。葛藤、不自由、自尊心の喪失。家族にも戸惑いや反発があったなか、最後には温かく包み込まれ、彼女が無垢な顔をしているのがせめてもの救い。主演のジュリアン・ムーアは各国各賞を総ナメ。むべなるかな。

【CDジャーナル 2016年02月号掲載】