思うままに着飾り、背筋を伸ばしてN.Y.の街を闊歩する老マダムたちのドキュメンタリー。八十代、九十代でも「若く見えるより魅力的に見えたいの」と、自分でデザインした色鮮やかな洋服を身につけ、自分の髪で作った羽のような付け睫毛でシャンソンを歌う。生きることを楽しんでいて、その裏に必ずあるはずの老いや死の不安を感じさせない。それに比べ、われわれ男のなんとひ弱なことか。「ボーイ・フレンド? ダンスする相手はたくさんいたけど、もうみんな死んじゃったわ」と笑う淑女たち。敵うわけがない。
【CDジャーナル 2015年11月号掲載】