Shota's Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

物語る私たち

母ダイアンは、太陽のように無邪気で奔放な女優。79年、5人の子を残して早逝。当時11歳の末娘がサラ・ポーリーで、『死ぬまでにしたい10のこと』では女優、昨今は監督としても成功。本作は、サラが母の実像を知ろうと周囲を訪ね歩いた証言の集積。各々の記憶は微妙に異なり、いつしかサラの出生の秘密まで──。死後に自分の人生が映画となり、生涯の秘密まで公になるとは、ふつうは怒り慌てる。が、陽気なダイアンは悔しがっているはず。自分が主役のパーティに、昔の粗い映像でしか参加できなかったのだから。

【CDジャーナル 2015年05月号掲載】