前田敦子にはもう“元AKBセンター”という冠詞は必要ないのかも。ちゃんと“女優”になっている(数年前、TVドラマのロボット役での無芸とは確実に違う)。田舎で小さなスポーツ店を営む父の元に、東京から娘が帰ってくる。父子家庭でせっかく大学まで出したのに、娘は日々部屋に閉じこもり、マンガとゲーム。「いつかその日が来たら動く……でもそれは今日じゃない」というモラトリアム娘。23歳は反抗期にも自立期にもやや遅いが、「何者でもない自分」にイラつく若者の気持ちに痛く共感できる佳作。
【CDジャーナル 2014年07月号掲載】