子どもがみな無邪気で天真爛漫だというのは大人の思い込みで、生まれたときから自分の存在理由を疑い、つねに“自分は罰せられるべきだ”と考えている子どもはいる。本作の主人公もそんな少年だ。難病で死に近づきつつある母を想えば想うほど、そのこと自体が重荷になり、逃げ出したくなる。そして眠れない夜、部屋の窓から見える墓場の巨木が怪物となって現れては、少年に悲しいお伽噺を聞かせる──。「現実をただ受け入れること」を知るには、少年は幼すぎた。深い陰影が印象的な、暗く美しいファンタジー。
【CDジャーナル 2018年01月号掲載】