Shota's Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

戦場カメラマンの唄

戦場カメラマンとして各国の紛争地帯を回りつつ酒浸りの日々を送り、マンガ家の西原理恵子の家に転がり込んでからは“文章の書けない文筆家”として活動していた鴨志田穣。2007年3月腎臓癌により42歳で逝去。彼が病床で綴った詩をもとにつくられたのが本CDで、韻も装飾もないが、職業作詞家には書けない言葉が並ぶ。見た人間だけが描ける戦場の日常。家族を裏切り、捨てられ、再び取り戻した人間しか知らないその絆。酒のせいで傷つけ合っていた元妻への本当の想いをつづった最後の曲、二人が手を繋いでいる情景が浮かんで切ない。

【CDジャーナル 2008年10月号掲載】