Shota's Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

犯さん哉

悪ふざけの極致、である。ともに演劇を愛しつつ、ナンセンスでシニカルな笑いを好む二人の中年男、ケラリーノ(作・演出)と古田新太(座長)が組み、2007年秋にパルコ劇場で演じた舞台を収録。紹介するほどのストーリーはない。すべてが不条理、無秩序なまま強引に進行する。8人しかいない役者はみな個性派で、一人が何役かを重ねて演じつつ、ときに入れ替わり、時系列を無視し、作者のつぶやきを劇中に取り入れながら、“世界の終焉”と“幼児なみの下ネタ”を同列に演じる。こんなふざけた舞台に入場料8500円は高いよ!と思いつつ観ていたが、散り散りだった物語は終盤から不思議な一体感をかもし出し、気がつけばすっかり巻き込まれていた。天晴れ。

【CDジャーナル 2008年07月号掲載】