Shota's Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

シルク

19世紀のフランス。美しい妻をめとったばかりの若者エルヴェは、町の絹産業の発展のため、蚕の卵を求めて極東の地に旅立つことに。ユーラシアを横断し、苦難を乗り越えて行き着いたのは、日本の山奥の寒村。そこには英語を話す統率者(役所広司)がいた。だが、エルヴェが目を奪われたのは、その男が妻として連れる少女(芦名星)。黒髪がエキゾチックな異国の少女と、愛すべき祖国の妻。二人の女の狭間で揺れた若者は、危険を顧みず、何度も祖国と日本を行き来する──。危険な道中の自然風景は、映像として見応えがある。しかし要約すると、単に“命を賭けた壮大な二股の物語”ともいえるような。セリフはほとんどない芦名星の静かな存在感が印象に残る。

【CDジャーナル 2008年07月号掲載】