ニキフォル 知られざる天才画家の肖像
ポーランドの保養地に居つき、物乞い同然の身なりで観光客に絵を売っていた画家ニキフォルの晩年を、静かなリアリティを持って描いた佳作。生涯で4万点にも上るという彼の作品はその純朴さから現在は世界的な評価を得ているが、言語障害があり意固地で我が侭、その上結核を患っていた生前の彼は、ただの厄介者でしかなかった。唯一彼を支え、最期を看取った男も同じく画家で、彼我の才能の差を悟って後見人役に徹するまでの愛憎や葛藤が痛ましい。映像は凛としていつつも湿り気があり、ニキフォルが愛した東欧の街並みを見事に映し出す。作中では彼の絵がほとんど見られないことが不満だったのだが、それは圧巻のラストシーンで解消、染み込むような感動が。
【CDジャーナル 2008年01月号掲載】