Shota's Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

ジャスミンの花開く

王道である。中国映画としても、歴史大河ロマンとしても。主演は“アジアの宝石”チャン・ツィイー。悲恋がつきまとう三世代の母娘たち──1930年代に銀幕スターを目指した茉(モー)、混乱の文革時代に情熱的な恋をした莉(リー)、父母を失って祖母に育てられた現代っ子の花(ホア)──のそれぞれの娘時代を、一人三役で演じ分ける(三人の名前にもちょっとした仕掛けアリ)。監督はチャン・イーモウ作品の撮影で知られるホウ・ヨン。監督としてはこれが初作品となるが、三つの時代ごとに意図的に区別した色調は、元カメラマンならではの緻密さ。繊細な映像に対して筋立てが大味なのはいたしかたあるまい、これは女優を堪能するための映画である。

【CDジャーナル 2007年02月号掲載】