間宮兄弟
30代になっても中学生のころと同じ遊びをして、仲良く一緒に暮らす間宮兄弟。ポップコーンを抱えて深夜映画を観たり、グリコじゃんけんでお気に入りの中華屋まで出かけたり。楽しい毎日だけれどただ一つ、二人とも女の子に縁がないのが欠点で、一念発起して気になるコに声をかけてみるが──。物語を飾る小道具や豆知識が楽しく(昔のボードゲームなどでいっぱいの二人の部屋がいい味!)、ともすれば“キモい”となるところを“愛すべき元・少年”として描くのに成功している。原作者(江國香織)が女性だからか、兄弟の男性性が漂白されている感はあるが、ファンタジーだからそれでいいか。そうこれは、小さな幸せを見つけるための日常的ファンタジー。
【CDジャーナル 2006年12月号掲載】