Shota's Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

ナイロビの蜂

“美しいアフリカを舞台としたサスペンス・ラブ・ストーリー”として売りたいようだが、社会派ドキュメンタリーとして観た方が価値がある。主人公はもともと園芸だけが趣味の穏やかな男だったが、社会活動家の妻が謎の死を遂げたことに疑念を持ち、孤独な戦いを始める。その裏にあったのは、先進国の製薬会社や官僚たちの陰謀、癒着──。ケニアで撮影された貧民街は本物で、そこでの人命の軽さには目を疑う。成人のHIV感染率が20%を越える国も多いというサハラ以南のアフリカ諸国の現状。それを都合よく利用して治験を行い、利益を上げている者がいることも空想ではなかろう。情熱的な若い妻をレイチェル・ワイズが熱演、アカデミー最優秀助演女優賞に。

【CDジャーナル 2006年12月号掲載】