Shota's Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

ククーシュカ

深い渓谷や草原が連なり、サンタクロースが住む場所としても知られる北欧・ラップランド。そこでフィンランドとロシアが戦争をしていたころ、二人の男と一人の女が偶然出会い、短くて不思議な共同生活を送った。男は共に自軍を追放された兵士で、敵同士。彼らを救ったのは現地で質素に暮らす若い女。三人が話す言語はバラバラで、お互いにまったく理解できないのに、男たちは女に好意を持ち、長い間男の肌に触れていなかった女も、男を求めた。戦争や生死といった大きなことと、性愛や嫉妬といった個人的なことが、同じ淡い画面の中に切り取って描かれ、どこかユーモラス。柔らかな語り口の中に、平和を求める静かな声が確かに聞こえてくる。美しい小品。

【CDジャーナル 2006年12月号掲載】