Shota's Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

2018-09-24から1日間の記事一覧

ソロモンの偽証

法廷物、陪審員物に名作は多いものの、未熟な中学生らが自分たちのために動いて開いた“学校内法廷”というのは、作者にとっても観客にとっても挑発的な試み。ある男子生徒の“飛び降り自殺”から始まり、イジメや家庭問題、そしてまたひとりの女子生徒の事故死…

博士と彼女のセオリー

“車椅子の天才科学者”として誰もが知るホーキング博士の、若き日の恋や学友との明るい生活から、徐々に難病ALSに冒されていくさまを描く。彼はまず手足の自由を、そして次第に言葉をさえも失ってしまう。一時、その“世界最高の頭脳”は動かない殻のような体の…

ブルックリンの恋人たち

ミュージシャンを目指し路上で歌う生活をしていた弟が、事故で昏睡状態に陥る。それまで長く仲違いしていた姉は、弟の痕跡を追おうと、弟が録音した歌を聴き、弟が好きだった歌手に会い──いつしかその歌手が心の支えとなって──。全編に挿入される“商業化には…

きっと、星のせいじゃない。

肺癌ステージ4の少女が、骨肉腫で右足を失った青年とふつうに出会い、ふつうに恋をする。ふつうの言葉でたくさんの話をするが、彼らは泣きも喚きもしない。傍目には重い内容を、ときには冗談にすらしてしまう。若くしてふたりとも、自分たちに未来がないこと…

毛皮のヴィーナス

ロマン・ポランスキー監督による完全な二人芝居。オーディションに遅れてきた下品で我が儘な女優。ただただ早く帰りたい演出家。しかし強引に演技を始めると、彼女はすべての台詞をそらんじており、19世紀の教養ある貴婦人そのものに。作品に対する独自の解…

シェフ 三ツ星フードトラック始めました

料理の腕はピカイチだが雇われ人としては不器用なシェフ。グルメ評論家に悪口を書かれたことに腹を立て、Twitterの仕組みを知らないままに抗議の悪態を送ったら、それが拡散され、結局、地位もプライドも失う。失意の中、オンボロの屋台トラックを買った彼は…

おやすみなさいを言いたくて

あらかじめ葬儀を済ませた後、体に爆弾を巻き付け、自爆テロに出向く若いムスリムの娘。それに同行取材する戦場写真家の女。冒頭シーンは衝撃的だ。前者は当然爆死し、後者は怪我を負いつつ生き残った。母国で待つのは、妻の、母の死におびえ続ける夫や娘。…

滝を見に行く

「紅葉の山道を散策し、見事な大滝へ。夜は温泉、お一人様3万円」というバス・ツアーに集まったのは7人の「ふつうのおばちゃん」。本当にふつうのおばちゃんなので、途中で大事件が起こったりはしない。ただ7人は道に迷い、山中で一泊を過ごす。この非常時、…

ベイマックス

ハマダ兄弟はロボット工学の若き天才。実直な兄は人間を癒やすケア・ロボット「ベイマックス」を大学で開発中。やんちゃな弟は、違法の戦闘ロボット賭博に夢中。しかし兄が死に、その裏に何かあると知った弟は──。ストーリーや映像は、アカデミー賞のお墨付…

ザ・ゲスト

戦場で息子を失った一家を、ある青年が訪ねてくる。「息子さんの戦友で、家族への伝言を託された」と。多くは話さない紳士的な態度。青く魅力的な目に、鍛えられた体。突然の来訪者を怪しんでいた家族は、いつしか彼に惹かれ、まるで“洗脳”のように信頼する…