Shota's Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

2018-09-15から1日間の記事一覧

95年のラジー賞(全米最低映画賞)総ナメの豪華絢爛な超一流B級作品が、特典映像付きで再発売に。スターを目指してラスヴェガスへやってきた一人の女が、ストリップ小屋から出発し、一流ショーの主役にまでのし上がる物語──といえば聞こえもいいが、そこで…

ヴェラ・ドレイク

1950年のイギリス、労働者階級の人々が暮らす街は重く湿った空気の中に沈んでいる。そんな下町を明るくしているのが、ヴェラ・ドレイクという世話焼きのおばさん。小動物のようによく動き、家族や近所の人々を励まして回る、人望の厚い彼女──が、ある日突然…

やさしくキスをして

舞台はイギリスの下町。パキスタン移民2世のイスラム青年と、敬虔なカソリック高校の女教師が出会い、恋に落ちる。多文化が共存する社会だからこそ、個々の背負った文化が、その生活に深く根ざしているのだろう。二人にとってはただの恋でも、周囲にとっては…

アメコミのスーパーヒーロー物には、雑誌社の違いから二つの系譜がある。一つが『スーパーマン』『バットマン』『ワンダーウーマン』などの“DCコミック”系で、二番手が『スパイダーマン』『X-メン』『ハルク』などの“マーヴェル・コミック”系。本作『ファン…

電車男

オリジナルはネット掲示板への恋愛相談の書き込みで、「映画のような恋がホントにあった!」という現状打破感と、恋の経過がリアルタイムで報告される臨場感が読む人を沸き立たせ、“まとめサイト”と呼ばれる保存・一覧用のサイトができて一般人の知るところ…

ロボッツ

ロボットだけの世界の片田舎、しがない皿洗いロボットを父として生まれたロドニーは、頭脳回路からアイデアが溢れ落ちてくるような発明少年。偉大な発明家になって世の中に役立ちたいという夢を追い、両親の猛反対を押し切って、一人で大都会ロボット・シテ…

チャーリーとチョコレート工場

子どもの頃、『チョコレート工場の秘密』という本に心奪われた人は多いはずだ(タイトルからしてなんと魅力的なことか!)。世界でたった5枚しかない当たり券入りのチョコを引き当てた5人の子どもが、不思議なチョコレート工場に招待される──64年出版のこの…

バッド・エデュケーション

「淫ら」という言葉が思い浮かぶ。少年同士の間にある淫らさ、聖職者と少年の間にある淫らさ──男女の淫らさより一段、業が深い。舞台は1980年のマドリード。映画監督エンリケのもとに、美貌の青年が現れる。彼はエンリケが神学校の寄宿舎にいたときに初めて…

ハウルの動く城

「この世界をずっと見ていたいなあ」と思う──ストーリーの起承転結をどうこういうよりも、ただこの賑やかで小気味よい世界にしばらく住んで、まわりを眺めていたい。父の残した下町の帽子屋を切り盛りする18才の少女、ソフィーは、ある日美しい青年と出会う…

海を飛ぶ夢

26年前、海に飛び込んだときに首を痛め、全身の自由を奪われてしまった主人公。支えてくれる家族や友人には常に穏やかな笑顔でこたえ、ベッドの上で淡々とした生活を送る彼が切望するのは、“尊厳のある死”だった。だが、指一本さえ動かせない彼は、自死を選…

ユーロトリップ

青春バカ映画、大好きだ。意味もなく出てくるハダカ、開き直ったかのようにお約束的な波瀾万丈。主人公・スコットは、高校の卒業式で彼女にふられた典型的アメリカ男子。失意の中、男だと思っていたドイツのメル友が実はグラマラスな美女だと知り、意気揚々…

フェーンチャン ぼくの恋人

男子より一足先に大人になっていく女子たち、少しだけ色気づき始めた自分、「女と口をきく奴は男じゃない!」などとはやし立てていた他の男子──思春期の入り口あたり、小さな教室の中に集まった仲間たちを思い出すと、その成長のアンバランスさに驚く。タイ…

エターナル・サンシャイン

たとえば少年時代の屈辱的な思い出、壊れた恋や死んだ子どものこと。「いっそ消し去れたらどんなに楽か」と思うような記憶は、誰にでもあるものだろう。それが現実に可能だとしたら(つまり「消したい記憶を本当に消せる」テクノロジーがあったら)、どうな…

最凶女装計画

『最終絶叫計画』のウェイアンズ兄弟が送る、くだらなすぎて痛快なコメディ。ノリがいいだけで失敗ばかりのダメ刑事二人組が、くそワガママなセレブ姉妹を誘拐から守る任務に。何を思ったか二人は、特殊メイクで彼女たちになりきり、身代わりとなってパーテ…

セルラー

女を口説くことにしか興味がない若者・ライアンの携帯に、見知らぬ女から電話がかかってくる。女はジェシカという名で、今、誰かに誘拐・監禁されているという。「助けて!」──誘拐犯の目を盗み、壊された電話を手作業で直してやっと発信したという必死の声…

PINK LADY LAST TOUR Unforgettable Final Ovation

ふと「大人になってよかったなあ」と思った。2005年5月26日、東京国際フォーラムでのピンク・レディー復活ライブ最終日のことだ。子供のころ、少ないお小遣いをためて買えるのは、ピンク・レディーの筆箱がせいぜいだった。3ヶ月ごとに出るレコードなど気軽…

父と暮せば

「生き残ってしまったこと」の負い目──美津江は、生き残っていた。1948年夏、広島の街を原爆の黒い雲が覆った3年後のことである。死んでしまった人を思い、「自分は幸せになってはいけない」と念じるように言いながら、ただひっそりと暮らす美津江。そこに現…

ボーン・スプレマシー

緻密なスパイ・アクションとして一部に根強いファンを持つ『ボーン・アイデンティティ』の続編。記憶を失った男がなぜか命を狙われ、その理由を調べる中で自分がCIAの特殊工作員であったことを知る──。筋運びは決して親切ではなく、観客を主人公の苦悩に付き…

みんな誰かの愛しい人

プライドとコンプレックス。人はみな、この両極の自意識の間に功名心や諦観、希望などを行き交わせつつ、毎日を暮らしている。2004年カンヌ映画祭で脚本賞に輝いた本作が描くのは、実はただそれだけのことだ。だからこその、緩やかで心地よい共感──。わがま…

コニー&カーラ

59年の名作『お熱いのがお好き』では、殺人現場を目撃してしまった主人公の男2人が、殺し屋たちの目をくらますために女装して逃げた。“いかつい女装”の滑稽さだけでも笑える、当時の大ヒット・コメディである。しかしそれから半世紀、世の中は複雑化し、同…

ターミナル

東欧のとある小国からニューヨークにやってきたビクターは、祖国で起こったクーデターにより“無国籍状態”となり、空港から外に出られなくなる。彼を追い出そうとする官僚的な空港責任者の策略にも乗らず、あくまで正当な手段で入国できるまで、空港で暮らす…

Mr.インクレディブル

“生理的に快感となる映像”というものがあること、ピクサー社は熟知しているように見える。この時代に今さらCGの映像美を誉めるのも気が引けるが、「走る」「滑る」「飛ぶ」などの基本的な動作が、とにかく観ていて「気持ちいい!!」のである。 そんな見事な…

スウィングガールズ

エンジのジャージ姿で東北弁をまくし立てる女子高生たちが、「野球部の男子、カッコよぐない?」「補習よりは楽しいべ?」「てか、騒げりゃなんでもええべさ」と始めたのが、ジャズのビッグバンド。吹奏楽部の代理で野球部の応援をするというのを口実に、ホン…

エイプリルの七面鳥

親はすべての子を平等に愛せるわけではない──薄々は感じていたけれど、でも“きれい事”の中で育てられていた子供時代には、無意識に否定していた。それがきれい事でしかないというのは、自分が大人になり、まわりが子供を持つようになってから実感した。長女…

CM食べ放題の夜 世界のCMフェスティバル / コカ・コーラCMソング集 1962-89

古いビデオテープを整理がてら観ていると、録画した番組より、合間に流れるCMに目を奪われる。「うわ、カマボコみたいな携帯電話!」とか「女の子が全員ニューハーフに見える……」とか。安心・安全をうたう銀行や証券会社のCMに、「この後すぐ潰れるんだよな…